「コレ、オジサンの?」
夕食時、そんな会話が時々交わされます。鎌倉・七里ガ浜の住宅街に軽トラックでお野菜や、お魚を提供してくださる方がいらっしゃいます。移動店舗です。少し若いお兄さんと少し年配のオジサン・・2台の軽トラックは其々、場所も曜日も時間も違い、また顧客としているお客さんの顔ぶれも違います。今日は眼科さんの前とか、今日は遊歩道の向こう側の角とか・・夕方になると坂ノ下とか・・坂の多い、一人暮らしのお年寄りの多く住むこの界隈には、とても大切な流通手段です。その時の都合で「いいよ、帰りに届けてやるよ!」なんて、お年寄りのご自宅に届けて上げる事もあるとか・・・。我が家は『オジサン』からが主流。子供の頃、オート三輪に野菜を積んだり、リヤカーでモノを売り歩く光景は良く目にしました。夏は金魚やさん、秋、冬は石焼芋や、玄米パンなど・・遠くからその気配を感じると、遊んでいても・・・ソワソワしたものです。買わなくても、金魚やさんなど来た時は玄関から飛び出して、リヤカーにまとわり付いて離れなかったものです。<こんなにゆらゆら揺られて・・金魚は酔わないのかしら?>その当時一番気になっていたことでした(笑)。だから七里ガ浜でそのオジサンを知った時、妙に懐かしく心がホッとしたのです。このオジサンは温和なとても素敵な方で、商売のお休みの日は、子供達に剣道を教えているのです。だから、商売をしながらでも顔見知りの下校途中の子供達に声掛けをしたり、励ましたりと、気配りをしています。たまにはちょっとしたお八つなども渡したり・・・昔の商店街には、そんな大人が何人か居ました。そうやって大人と子供の大切なコミュニケーションが取られていたのです。そんな風景が有りました。とにかくオジサンの運んできてくれる品物は絶品で間違いなし!なのです。お野菜でも、鮭の切り身でも、お漬物でも、さつま揚げでも、お豆腐でも、お菓子まであるのです。
「小さいけど、このみかんは旨いよ!」
「この葱は絶品だよ」
「今日の、コレは・・・あんまりお奨めじゃないかな? 一応必要な人もいるから仕入れたけどね・・」
丸ごと100%信じていつも大満足なのです。だから、一味美味しいものが食卓に上ると・・「この干物オジサン?」となるわけです。最近オジサンの小さな手持ち金庫の上に貼ってあった吉永小百合さんの写真が剥がれてしまったそうです。皆に冷やかされていたのですが「俺が貼ったんじゃないよ、誰かお客さんが貼ってくれたんだよ」・・だそうです。先日実家へお土産に・・とオジサンから鮭と白菜漬けを購入した時・・・「おう、未だエクボ有りますね!」と昔の私を覚えていて下さいました。オジサンのファンの一人としては、小百合さんに負けじと何時か手持ち金庫に私の写真をオーディションしてもらおうかしら?なんて・・・(笑)

隣にいる他人を信じられず、美味しいよ!と言ったものを疑い、眉をひそめながら、私達は何時までそんな風に生きていかなければならないのでしょうか?
七里のオジサンの存在はこの湘南の小さな住宅街の一角において、お年寄り達の救いの星なのです。何時だってオジサンの周りには笑いがあり、温かい空気が漂っています。何時までもお元気で居て欲しいと思います。
我が家の老犬ムッシュは老いが加速され、夜泣きが少しづつ増えています。昼間は音楽や人の話し声を聞きながら、ゆっくりと昼寝をしていますが、物音の静まる夜は視力も無くなっているので不安が募るのでしょう。なるべくBGMを切らないようにしているのですが・・・此処最近は私がトロトロ始める夜中に突如泣き出します。水分を与え、胸にしっかりと抱えてやると私の鼓動を感じてか・・泣き止む事もあります。<大丈夫だよ、私は此処にいるよ!決して君を裏切らないからね!>眠気のモウロウとする冷気の中で彼の温もりと一体になりながらそんな風に声掛けをする。そして同時に<私だって、日本中の誰だって、華やかなイルミネーションなんかよりも皆今、こんな台詞と温もりを待っているんだから!>そう呟くのでした。

今年は後半、珍しく日本のあちこちに出かけました。沢山の新しい出会いをさせて頂きました。娘の大怪我にも遭遇して、留めは私の帯状疱疹です。
有りがたい沢山学びがありました。来年がどんな年になるのか・・・真っ白なカレンダーにまた元気な色を付けて行きたいと思います。
1年間、私への素敵なメッセージありがとうございました。またお待ちいたしております。ブログも怠けずに頑張ります。
どうぞ良い年の瀬をお過ごし下さいませ。

※写真は蕾を付けたクリスマスローズです。

2007年12月25日 Terumi Niki

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