2008年4月

関東地方に低気圧が近づいて、朝から風雨が激しくなっていた。その中を私は<長靴にしようか・・・いや、革靴にしようか・・>と靴選びに迷っていた。11時46分発の東北新幹線に乗る為だった。
たった一日見つけ出したその日・・私は福島県郡山市から磐越東線に乗り換え二つ目の『三春町』へと赴いた。

目的は最後の『桜』を見るために・・・と言うより玄侑宗久師にお目にかかりに・・・と言ったほうが正しいのかもしれない。不思議なご縁で、メル友にさせて頂きながら、一度だけお電話で御声を聞いただけで・・・師の作品も語らせて頂いたのに、未だお目にかかってはいないのだ。

以前から一度師のお寺の境内にある「枝垂桜」を拝見したい!とは思いつつも、ムッシュの介護でそのような時間はとうてい無理だな・・・と今年も諦めていた。桜は逃げては行かない、ムッシュをしっかりケアーしてあげなくては・・・。
そんな矢先に・・・奴は逝ってしまった。まるで私を桜に差し向けるかのように、その為の時間が出来てしまった・・・。
悲しさが募って・・・思わず出かけてみたくなったのだ。
玄侑師とも時間の折り合いが付きお目にかかることが出来た。
東京の雨ほどではなかったが、しとしとと少し冷たい空気の中で三春の町にも冷たい小ぬか雨が降っていた。
数人の観光客の方々と一緒に降り立った三春の駅前は心がホッとするような優しさのある佇まいだった。
お約束の時間まで少し余裕があったので樹齢1000年とも言われる日本三大古木の1つ『滝桜』を見に町営バスに乗り込んで見た。山道を走ること30分余り、雨にも関わらず『滝桜』の周りには沢山の観光の人々の傘の花が咲いていた。圧倒するような見事な枝垂桜をバスの中から眺め・・・師のお寺へ。お写真で拝見するよりもほっそりとなさっておられる印象だった。400年と言う時間をくぐりぬけてきた建物の中で数時間お話をさせて頂き、奥様の入れてくださった温かい甘酒を頂きながら、境内裏にそびえる念願の枝垂桜を縁台から眺めさせて頂いた。バスで巡った時も感じたが、山々に在る桜は殆んどが<枝垂桜>である。
雨の中に浮かび上がっている見事な『枝垂桜』はまるで私の中に在る悲しみが一気に溢れ出たようにも写った・・・しかし壮大な枝の流れの美しさは今まで私の中に存在していた「桜」のイメージを一変させた。 
『生憎のお天気でしたが・・・今日の桜が一番奇麗かも知れませんねえ〜』ふと呟かれた玄侑師のお言葉に、思わず『あの仔が私をこの場所に連れてきてくれたのだと・・・、何時までも僕の逝った季節を忘れないで・・』と言っているのだ・・・。
玄侑師とお別れして帰りの新幹線で、また新たな涙がこみ上げたが・・・桜色の優しい香りがしたのは、気のせいだったのだろうか?

※今月の写真は、福聚寺の枝垂桜です。

2008年4月20日 Terumi Niki

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