2008.07

花の終わったラベンダーを見るに見かねて、直射日光の当る窓辺から日陰に移し変えてやった。

20日間近くも続いている猛暑・いや酷暑。ギリギリまでエアコンを我慢していたがさすがに降参。熱中症では死にたくないとON・OFFをこまめに調節しながら作動させている。
ガソリンスタンドを横目でにらみながら、どこが安いか……日々研究。<ここ!>と決めると直行。(勿論・セルフ)
「はいお疲れ、ご飯上げるからね、でもゴメン、半分だけよ」
そんな事を呟きながら我がルノー君の腹を満たす。
お陰で最初の頃はドキドキしながらスタンドのお兄さんに誘導してもらったセルフ作業も、今では難なくこなす逞しくなったワタシ。
食料品が値上がりして、公共料金も値上がりするという。
スーパーに行き千円札一枚で、アレもコレもとこまごましたものを買えたのに……そんな事もままならなくなっている現実。
物の値段が上がるのに、給料は上がらない……どころか、職を失う人だって。

だから、『今』を楽しませてくれるものだけがモテハヤサレル。現実の辛さから逃れる為の麻酔薬?
いつから、こんな事になったのだろうか……と同じ世界に身を置きながらTVのチャンネル合わせに戸惑っている。
そして……様々な信じられない事件。あまりにも人としての枠をはみ出している現実が悲しすぎて……。
「誰でもよかった……」
信じられないその言葉に……また戸惑う。
しかしその一方で、警察官がいくら町にくり出したとしても、若者の心に住み着いてしまった病はいつどこで発病してもおかしくはないのだと思ってしまう。

まるで何かを象徴するかのようなこの異常気象の中で、少なからずも彼らと同じようにお腹の中が煮えくり返っている人々はたくさんいる筈だ。
明日に何かを見出せない現実。
何も信じられず、誰も信じられず、親の背中さえ信じらない子供達がが続出している。正直にコツコツ生きている人間が「負け組み」なんて失礼なレッテルを貼る世の中で、本当の「愛」を受け取っていない若者達は増殖し続けているのかも知れない。
本来の日本人は何処へ雲隠れしてしまったのだろう?
私の子供の頃目にしていた大人たちの背中は……もっと逞しく、底力があったような気がした。貧乏だったがもっと凛々しかった。カッコよかった。
『武士は食わネド』と言う言葉があるが……もう、日本には武士は居なくなってしまったのだろうか?
オリンピックに挑んでいる若者達。派手にマスコミは取り上げるが、日々コツコツと血のにじむ努力をしているのだ。職人として様々な世界で頑張っている若者達だってたくさんいる。伝統芸など、10年頑張ったってまだまだ半人前だ。
私も気がつけば、50年という時を歩いて来た。
だからといってハリウッドスター並みの生活なんてとんでもないハナシ(笑)。
ただ、自分が自分と向き合った時、自分を納得させるだけの仕事はしてきたつもりである。そして、きちんと評価してくれた人たちがいた。だから、頑張ろうと歩んできたのかもしれない。
私たち団塊の世代は、そんなコツコツとやってきた大人達のうしろ姿を見て育ってきた。底力の源を見てきた。少なくとも、立派な背広を着た人間達が軽々しく頭を下げて「申し訳ございませんでした」などと言っている妙な姿は見たことがなかった。

夏が過ぎると、また私は学生達の前に立つ時間がやって来る。
毎年、毎年……考えてしまう事が増える。何を手渡していこうかと……あまりにも有り過ぎて。
「人間って捨てたものでないよ! 自分が信じた事を貫きなさい!」と胸を張って言ってあげたいのだが……。
重松清氏の『きみの友だち』が映画化された
。私は数年前、この原作を学生達に朝の10分間朗読で読んでいた。一生懸命聞いてくれた。彼らはの心は柔軟性がきちんとあるのだ。ただ、未熟で不安定なだけなのだ。間違ったモノを押し込めば、やはり素直に飲み込んでしまう。
心ある文化人達が、今必死でこの日本にカンフル剤を打っている。お金よりも大切なモノがあるんだよ!と。
しかしエコブームもひっくるめて、端から誰かが金儲けに走っているのも現実だ。
何とか人間が本来持っている<何かを感じ取る心>だけは退化させて欲しくないと願う。人が人に手渡していく心は決して繋がる!と私は信じたい。
手を抜かず、手間隙をかけて若い心を根気欲育てる責任が、私たち大人にある事を、全ての分野の人間が再度認識しなければいけない時が来ているような気がしてならない。子供達への償いとして。

鎌倉で育てていた 幾つかのミント達に水遣りをすると、決まってよい香りを放ってくれる……。そんな時ミント達が『美味しい、美味しいね!』と言ってくれている気がして……彼らと繋がっている幸せを感じるのだ。そして明日も頑張ろうと思えるのだ。彼らにお水を上げるために。
生きるって、そんな些細な事から始まるのかもしれない。だから神様は、動けない植物や言葉が話せない動物を私たちの周りに共存させて下さっているのだろう。

 

2008年7月29日 Terumi Niki

●バックナンバーも読みたい方はこちらから……